はじめに
絵本は子供の成長に欠かせない存在です。しかし、絵本は著作権の対象となるため、利用には一定の制限があります。本日は、著作権が切れた絵本についてお話しします。昔から親しまれてきた名作絵本の中には、すでに著作権が消滅して自由に利用できるものが数多くあるのです。著作権が切れた絵本を上手に活用することで、子供たちに質の高い作品に触れる機会を提供できます。
著作権切れの意味
まずは著作権が切れるタイミングについて説明しましょう。原則として、著作者の死後70年が経過すると著作権が切れます。つまり、著作者が亡くなってから70年以上が経過した作品であれば、自由に利用できるようになるのです。
個人の著作物
個人の著作物の場合は、著作者の死亡年が基準になります。例えば、昭和40年(1965年)以前に亡くなった作家の作品は、現在すでに著作権が切れています。一方、著作者の死亡年が昭和43年(1968年)の場合、2039年1月1日以降であれば著作権が消滅します。
代表的な日本の絵本作家で、著作権が切れている例としては、新美南吉(1951年没)や田邊徳太郎(1954年没)などが挙げられます。彼らの作品は自由に利用でき、読み聞かせや上演などに使えます。
無名・団体名義の著作物
無名や団体名義で発表された作品の場合は、公表年が基準となります。昭和42年(1967年)以前に公表された作品は、現在すでに著作権が切れています。一方、昭和43年(1968年)に公表された作品は、2039年1月1日以降であれば著作権が消滅します。
古くから親しまれてきた民話や昔話の中には、著作権が切れたものが多数あります。グリム童話や日本の昔話絵本なども、自由に利用できる可能性が高いでしょう。
戦時加算の影響
ただし、著作権に関しては戦時加算という特例があり、一部の作品では保護期間がさらに長くなっている点に注意が必要です。太平洋戦争中の1945年から1950年までの期間については、保護期間に加算されるため、最長でも80年程度保護期間が延びます。
戦時加算の影響を受ける代表的な作品としては、宮沢賢治の作品が挙げられます。『風の又三郎』や『銀河鉄道の夜』などは、戦時加算のため2023年頃から順次著作権が切れる見込みです。
活用方法
著作権が切れた絵本は、様々な場面で自由に活用できます。読み聞かせやペープサート、紙芝居製作など、子供向けの活動に最適です。また、動画配信やWebサイトでの掲載、印刷物への転載なども可能になります。
読み聞かせ活動
読み聞かせは、子供の言語能力や想像力を養う上で非常に重要な活動です。著作権が切れた名作絵本を使えば、質の高い作品に触れられるだけでなく、許可を得る手間も省けます。図書館や保育園、学校などで積極的に取り入れていくと良いでしょう。
著作権切れの絵本には、新美南吉の「れうれう家のおはなし」、田邊徳太郎の「ぶんぶくちゃがま」、ヴィルヘルム・ハウフの「カレーわん」といった有名作品がたくさんあります。子供たちに人気の高い作品を選んで読み聞かせをすれば、喜んでもらえるはずです。
動画配信
YouTubeやニコニコ動画などで絵本の読み聞かせ動画を配信することも可能です。著作権が切れていれば、許可を得ずに動画をアップロードできます。保護者が忙しくて子供と一緒に絵本を読む時間が取れない場合など、動画配信は有効な手段になります。
ただし、動画に著作権切れの作品以外の音楽や映像を使用する場合は、別途権利処理が必要になる点に注意しましょう。また、営利目的で動画配信を行う際は、事前に法的な確認が欠かせません。
教材・印刷物の作成
著作権が切れた絵本のイラストや文章は、自由に教材や印刷物に転載できます。例えば、授業のプリントに絵を載せたり、読み聞かせ向けのパンフレットを作成したりすることができます。子供向けの地域情報誌や絵本ガイドブックの作成にも適しています。
印刷物を作成する際は、転載した作品のクレジット表記をしっかりと行う必要があります。また、営利目的で印刷物を頒布する場合は、事前に確認が必要です。
注意点
著作権が切れた作品を利用する際は、一定の注意点があります。まず、作品の著作権が本当に切れているかどうかを確認することが大前提です。著作権情報が不明確な場合は利用を控えましょう。
確認方法
絵本の著作権情報を確認する方法としては、以下のようなものがあります。
- 青空文庫の作品一覧で確認する
- 出版社のWebサイトで確認する
- 著作権リサーチ会社に調査を依頼する
- 公的機関に問い合わせる
中でも無料で利用できる青空文庫は、著作権切れの作品を広く収録しているため、初めて確認する際に参考になります。しかし、情報が古い可能性もあるため、できれば複数の方法で確認を行うことをおすすめします。
引用・改変の扱い
著作権が切れていても、著作物の引用や改変には一定の制限があります。一部分の引用は無許可でも可能ですが、作品の主要部分を抜粋したり、大幅な改変を加えたりする場合は、慎重に検討する必要があります。
また、絵本の表紙画像のみを使用する場合でも、引用に該当するため、注意が必要です。安全側に立って利用を控えるか、事前に専門家に確認を取ることをおすすめします。
まとめ
今回は著作権が切れた絵本について、その意味や活用方法、注意点などをご紹介しました。著作権切れの作品を上手に活用することで、子供たちに素晴らしい絵本を届けられます。一方で、著作権の確認は欠かせません。適切な利用のためには、関連法令を理解し、注意深く対応していく必要があります。
子供の成長に寄与する絵本の力を最大限に活かすため、今後も著作権切れの作品を賢明に取り扱っていきましょう。